紙漉き

昨日まで3日間紙漉き。冬場は水が冷たいのでいい紙が漉ける。その代わり手は真赤にふくれてしまう。冷たい水。本当は水道水じゃない方がいいらしい。私が紙を自分で漉いて作品を作ってみたいと思ったのは15年前くらい。紙がパシッと四角なのに違和感を感じて、紙を焼いたりして自然に出来上がったカタチを作品にしてみたくなったのが始まり。紙の耳はボソッと繊維が綻んだりしていて、魅力的。はじめの頃は大量の牛乳パックを使った。これが結構上質なパルプなのだ。コ-ティングをはがし、細かくちぎって水に浸し、家庭用のミキサ-にかけて繊維状に戻す。ミキサ-のモ-タ-を焼き切って幾つダメにしたことか。

 4.jpg攪拌  6.jpgトロロアオイと混ぜる  8.jpg漉く

今は、こんな機械を学校が購入したのでかなり楽ちん。3kgくらいあっという間に砕いてしまう。ちなみに、この中にあるのは楮。繊維を砕いたら、つなぎのトロロアオイを入れて攪拌。以前、トロロアオイを調達できなくて、代わりにオクラを植えて使ったことがあったけれど漉き上がった紙は青臭かった。ここまで出来たら、漉き枠を使って漉くだけ。三椏、雁皮、楮、パルプ・・・。繊維によって色味も異なり、混ぜたりすることで自然ないろんな調子ができる。また、いろいろな素材を中に漉きこんだり、工夫次第。
今回、紙好き3人で紙漉きをしたけれど、お互いにやりだしたら止まらないといったかんじで、殆ど言葉を交わすこともなく、半分トランス状態で黙々と10kgほど漉いた。売っていないような面白い紙を作りたくて、それぞれが自分の世界に入り込んでしまう。終わってみると背中の、無い筋肉が筋肉痛。充実の3日間、締め括りの宴をして解散。 ・・・さて、それ自体にかなり存在感のあるこれらの紙を、どう料理して作品にしようか。

2005/12/31

好きな絵

3.jpg好きな作家は俵屋宗達。小学校のとき教科書だったか何かで、風神雷神図屏風を見て妙な形体になんだかゾワゾワしたのを覚えている。その後、当時日本には存在しなかった象を想像で描いた絵があると聞き、それが宗達が描いたのだと知ったときどんなものか見たくて仕方がなかった。
美大では3年生くらいに古美術研究で京都に行くのだけれど私はそのとき行かず、友達の話を聞いて後悔した。養源院にはあの象や獅子や麒麟などの襖絵、建仁寺の風神雷神、あとから単独で宗達の絵を置いてある寺をいろいろ調べて観に行った。風神雷神は行けば常に見られる訳ではないらしいのだが、運良く観ることが出来た。他にもいろいろ観てまわり、おおらかで楽しげで不思議な空気の広がりを堪能した。
骨の髄から好きだ!!と思う気持ちは外国作家の作品に対してはあまり感じない。(とは言ってもマティスの金魚シリ-ズすべて本物を見るという目標や、ヒカリモノのクリムト作品に惹かれるのも確かだけど。)平面の中の空間のとらえ方だろうか。
ちょっと前に読んだ本に、砂漠地帯は1点にいて生活できないから鳥の目線、俯瞰で上から下への視点でものを見、それが西欧へ伝わって天地創造の概念を持ったが、日本のような見通しの利かない森林の民は、ものは下から上へと見るしかなかった、と言うようなことが書いてあった。良くも悪くも殿様に命じられ、隅々まできっちりと職人的にコツコツと積み重ねていくのが得意な日本人にはそういう背景があるのだろうか。しかし、宗達は殿様にも仕えず異端で、想像を自由に羽ばたかせて象など描いて、きっと大らかで、この象のように恰幅 の良いおじさんだったのだろうな。 

2005/12/8