私が高校生の時に予備校で出会った師匠、佐藤全孝先生。ゼンコー先生、と呼んでいた。
今年の春に亡くなったという知らせ。
絵を描くということの根本を教わり、本当にお世話になった方だ。
受験生だったから、描く絵は石膏デッサンや油絵漬けの毎日だったが、
そんな基本の中で、絵画の[空間]や[かたち]について、多くのことを教わった。
空間の重さや、そこにあるかたち、をどうやって出していったらいいのか。描けなくなってしまったこともあった。
私が描く水彩画の空間の在り方は、多分、受けた影響は大きいと思っている。
私の展覧会にはいつも足を運んでくださり、いろいろ助言もしてくださった。
先生は、昔はあまり展覧会をしないご様子だったけれど、私が大学を卒業してだいぶたってから展覧会の案内をいただくようになった。
しばらく「祭壇」というタイトルの作品が続いていた。
見ているとなんだか怖くなる、精神と肉体とに分けるなら、引きちぎられた肉体のような、激しいストローク。
長く闘病されていたが、絵を描くことだけが楽しみだった、という奥さんの言葉。
身を削るような、絵に身を捧げた、という迫力が伝わってくる。
気に入って求め、私の家に飾ってあるのは「遠い日・いつか いつも見ていたような気がする 白い時間」というタイトルの作品。
遠いどこかへ、吸い込まれていくような、静かで、穏やかで、今はそんな時空に居られるのかしら。