好きな絵

3.jpg好きな作家は俵屋宗達。小学校のとき教科書だったか何かで、風神雷神図屏風を見て妙な形体になんだかゾワゾワしたのを覚えている。その後、当時日本には存在しなかった象を想像で描いた絵があると聞き、それが宗達が描いたのだと知ったときどんなものか見たくて仕方がなかった。
美大では3年生くらいに古美術研究で京都に行くのだけれど私はそのとき行かず、友達の話を聞いて後悔した。養源院にはあの象や獅子や麒麟などの襖絵、建仁寺の風神雷神、あとから単独で宗達の絵を置いてある寺をいろいろ調べて観に行った。風神雷神は行けば常に見られる訳ではないらしいのだが、運良く観ることが出来た。他にもいろいろ観てまわり、おおらかで楽しげで不思議な空気の広がりを堪能した。
骨の髄から好きだ!!と思う気持ちは外国作家の作品に対してはあまり感じない。(とは言ってもマティスの金魚シリ-ズすべて本物を見るという目標や、ヒカリモノのクリムト作品に惹かれるのも確かだけど。)平面の中の空間のとらえ方だろうか。
ちょっと前に読んだ本に、砂漠地帯は1点にいて生活できないから鳥の目線、俯瞰で上から下への視点でものを見、それが西欧へ伝わって天地創造の概念を持ったが、日本のような見通しの利かない森林の民は、ものは下から上へと見るしかなかった、と言うようなことが書いてあった。良くも悪くも殿様に命じられ、隅々まできっちりと職人的にコツコツと積み重ねていくのが得意な日本人にはそういう背景があるのだろうか。しかし、宗達は殿様にも仕えず異端で、想像を自由に羽ばたかせて象など描いて、きっと大らかで、この象のように恰幅 の良いおじさんだったのだろうな。 

2005/12/8