ただ今腐蝕中

版画の制作中、左の写真は仕事場の机の上。防食剤(グランド)を塗った銅板を引っ掻いて図の部分を作り、
腐蝕をさせて版に凹凸をつける。
右の水色の液体が硝酸 で、これに版を数時間浸し凹凸をつけるのだ。
腐食のあいだは手持ち無沙汰、出掛けられないし、他の事をしているとうっかり忘れてしまうし、
腐食の具合をちょこちょこと見張っていなければならない。でも今日は良いお天気、うまく腐蝕も進みそう。

版画はとにかくストイックな作業。色を使うにもちょっと不自由でいろいろと制限がある。
その点、水彩は油彩より手軽で、そしてたくさんの色を自由に使える。
水彩にはそんな開放感がある。

水彩は版画をつくるときのエスキースでガッシュを使っていたが、今のような透明水彩を描くようになったのは10年前に水彩教室の代行を頼まれたのがきっかけだ。
そんな水彩を描いていくうち、版ももっと自由でいいんじゃないかと思うようになった。版はとにかく工程がたくさんあって面倒だが、それでも版を使いたいのは物質感、金属の持つ抵抗感に魅力を感じるから。

間接的な作業だが、もっと版との距離を近く感じる作品ができたらいいな。

2013.3.22